ゴードン R . マッキナリー
2023-2024年度 国際ロータリー会長


私たち自身の変化

 今こそ、平和が切実に求められています。中東はここ数年で最も不安定な情勢にあります。ウクライナでは第二次世界大戦以降、ヨーロッパで最大規模の戦争が起こっていて、スーダンと中央アフリカの一部でも武力紛争が発生しています。ほぼ全ての大陸で大規模な武力紛争が起こっています。

 ロータリーは平和を推し進める上で、重要な役割を担っています。「ロータリーは戦争を望む人々に負けないくらい積極的に、平和に取り組む必要がある」と私はよく口にします。その精神は、ロータリーのビジョン声明に表されています。「私たちは、世界で、地域社会で、そして自分 自身の中で、持続可能な良い変化を生むために、人びとが手を取り合って行動する世界を目指しています」。世界に変化をもたらすには内なる変化を促す必要がある、ということを忘れてはなりません。

 平和を築く行動を互いに実践できるかどうかは、自分たち次第です。私たちは、互いの動機を疑ったり、最悪の解釈にすぐ飛びついたりするべきではありません。関係や気分を害するような言葉を口にされても、その発言の意図を思いやりと好奇心をもって聞き返す機会が私たちにはあり ます。そうすれば、関係を修復するチャンスが生まれます。

 世界の模範となりたいのであれば、互いにこのようになることから始めましょう。相手を傷つけ、不信を生み出す言葉ではなく、より深い理解と実り豊かな付き合い方を一緒に見つけましょう。ロータリーの理念を守りつつ、対立を悪化させずに終わらせるためには、誠意を疑わないこと が大切です。

 アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)暗殺事件が起こった 1968 年 4 月 4 日に、ロバート F. ケネディ上院議員が行った演説が思い出されます。

 遊説中だったケネディ上院議員は、演説先のインディアナポリスでキング牧師が殺害されたことを知ります。彼は、演説に集まったアフリカ系アメリカ人を中心とした住民たちにその悲報を伝え、正義と平和のために尽力したキング牧師をたたえました。そして、次の言葉が怒 り悲しむ群衆の心をつかみました。「このような正義にもとる行為に、あらゆる白人に対して憎しみと不信感が募りそうだという黒人の方には、私も同じ気持ちだ、としか言えません。私も兄の暗殺を経験していますから」。 ジョン F. ケネディ元大統領の暗殺事件について彼が公の場で話したのは、この時が初めてでした。その夜、アメリカ中の都市で暴力事件が多発しましたが、インディアナポリスでは起こりませんでした。

 危機と絶望の中にいるとき、私たちは何よりも共感を必要としています。共感こそ平和へ至る最も強力な手段です。世界に希望を生み出すために、勇敢に、そして謙虚に最初の一歩を踏み出すには、共感の心を持たなくて はなりません。


(RI指定記事  提供 : ロータリーの友 )
2024/04/01